西洋古典文学
50.オウィディウス『変身物語』(ヴェネツィア、1584年)

 

Publius Ovidius Naso, Opera omnia syoshi.jpg (1610 バイト)

   中世以降のオウィディウスの受容には長い伝統がある。中世においては、7万行に及ぶフランス語韻文の『道徳化されたオウィディウス』(Ovide moralisé)、また13世紀においてはピエール・ベルシュール(Pierre Bersuire)による同名のラテン語作品 (Ovidius Moralizatus)など、キリスト教的な聖書釈義学の立場から『変身物語』を寓意的、教訓的、予型論的に解釈した作品が主流であった。そうした立場からではなく、テクストの確定を目的として校訂と注解をおこなった最初の版は、Raphael Regiusによる校訂版『変身物語』(Venezia, 1493)である。ヴェネツィアの出版社ジュンタは、1497年にGiovanni dei Bonsignoriによるイタリア語訳のテクストに、『ポリフィーロの狂恋夢』(1499) (no.58) と同じ流派に属する挿絵を組み合わせた『変身物語』 (Ovidio Metamorphoses vulgare)を刊行している。このイタリア語訳は16世紀にも幾度か版を変えて出版されている。

   本書は同じジュンタによるイタリア語訳の挿絵入り『変身物語』だが、[1]訳文は1561年に全訳が刊行されたジョヴァンニ・アンドレーア・デランギラーラ(Giovanni Andrea dellAnguillara) のものを用いている。[2]アンギラーラ訳は、ルドヴィーコ・ドルチェ(Ludovico Dolce)の訳と並んで、16世紀後半を代表するイタリア語訳であった。銅板のタイトルページと全15巻それぞれの冒頭に見られる全ページ大の挿絵は、ヴェネツィアで版画の出版もしていたジャコモ・フランコ(Giacomo Franco, 1550-1620)による。

   第10巻の扉絵[3]は、妻エウリュディケを冥界から連れ帰る途中で、後ろを振り返ったために永遠に妻を失うことになるオルペウスの話を中心に構成され、背景には第10巻に登場する主要なエピソード     キュパリッソスと雄鹿、ガニュメデスを誘拐する鷲の姿のユピテル、角男たち、ピュグマリオン、ヴィーナスとアドニス、アトランタなど     が描かれている。

   第4巻の扉絵[4]は、勘違いからそれぞれ自ら命を絶つこととなるピュラモスとティスベの悲恋物語を中心に、ミニュアスの娘たち、カドモスとハルモニア、ペルセウス、ヘルム=アプロディトスへの変身などのエピソードが描かれる。

 

オウィディウスの他の著作: nos. 51, 52 

 

     

 

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