ヨーロッパ文学
58.フランチェスコ・デ・コロンナ(伝)『ポリフィーロの狂恋夢』

(ヴェネチア、1545年)

 

Francesco de Colonna (attr.), La Hypnerotomachia di Poliphilo syoshi.jpg (1610 バイト)

   フランチェスコ・デ・コロンナ作と伝えられる夢物語。主人公のポリフィーロは眠りに落ち、夢のなかで恋人のトレヴィーゾのポーリアを探し求めるが、その過程でさまざまな古代の人物や遺物に出会うという話である。本書は、その繊細な木版画、装飾頭文字、テクスト本文、欄外見出しが創り上げている見事に調和したレイアウトゆえに、初期印刷本のなかでも最も美しいとされてきた一冊である。初版は1499年に刊行されたが、中世写本のレイアウトを継承した書物が多いインキュナビュラのなかで、印刷本独自のレイアウトを追求している点でも画期的である。本書を出版したアルドゥスは、ギリシャ語の古典の刊行やイタリック体を初めて用いた古典文学の小型本の刊行で有名だが、挿絵をふんだんに含み、難解なラテン語的なイタリア語で書かれた本書は、そのなかでも異彩を放っている。初版はアルドゥスが外部資金により委託されて印行したもので、出版当時はあまり売れなかった。慶應義塾図書館所蔵本はアルドゥスの息子のパウルス・マヌティウス(Paulus Manitius, fl.1533-1557)1545年に刊行した第2版である。タイトルページを除くと初版とほぼ同じ版木が使用されている。

   ポリフィーロは夢のなかで巨大なピラミッドを訪れるが、その足下に、背中にオベリスクを乗せた巨大な黒光りする象[1]を見て、そのなかへと入ってゆく。また別な場所では、ゼウスの愛を表しキューピッドを賛美する4つの凱旋の馬車を見る。第1の馬車[2]は、金、銀、宝石で飾られ、そのまわりでニンフたちが笛の音にあわせて踊っている。セントールたちに引かれる馬車はゼウスが白い牡牛となって連れ去ったエウローペーを表し、神々にも人間にも、等しく痛手を負わせるキューピッドを描いている。

 

『書物の森』, 127

 

     

 

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