西洋古典文学
48.ラクタンティウス『信教提要』(パリ、1551年)

 

Lucius C. Firminianus Lactantius, Des Divines Institutions syoshi.jpg (1610 バイト)

    ラクタンティウスはコンスタンティヌス大帝に仕えたキリスト教の護教家で、本書の他に、『迫害者の末路』(De Mortibus persecutorum)などの著作がある。『信教提要』において著者は、異教が哲学を欠いた宗教であるのに対して、一神論のキリスト教は知恵と宗教を合体するものであると主張する。さらに、知恵を欠いた宗教は真の宗教ではなく、同様に宗教を欠いた知恵は真の知恵ではない、知恵を教え説く者はおしなべて神の司祭にほかならないと指摘する。実際、中世を通じて哲学者はほとんど例外なく聖職者であった。

   本書に含まれる179点の木版画は、ホルバインの『旧約聖書挿絵』(no.46)に基づくと考えられるもの、ジル・コロゼ作を含む複数のエンブレム・ブックを刊行したパリのドニ・ジャノ(Denys Janot)所有のものなど、いくつかのグループに分類される。また、エンブレム・ブックの制作者でもあったジャン・クーザン(Jean Cousin)作と考えられるものもある。本書は1548年の初版に続く第2版だが、初版、第2版とも僅少である。

   木版画は必ずしも本文の内容に対応しているとは言い難い。教壇から語りかける教師を描いた図[1]は、本文中の弁論家(orateur)という言葉に触発されたと考えられるが、図[2]は霊魂の不死性を主題とする本文とは無関係である。実際この図版は、ジャノ印行のコロゼ『ヘカトングラフィー』(no.8)に、「力よりも優しさで」というモットーとともに使用された北風と太陽の寓話の挿絵である。コロゼの挿絵[3]の下には、「風の冷たさに対しては、人間はしっかりと襟を立て身を引き締めるが、太陽ならば、外套を地面に脱ぎ捨てさせることもできるのだ」という意味の4行詩が印刷されている。版木の再利用の興味深い具体例である。

 

     

 

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