エンブレム・ブック | |||
18.オットー・ファン・フェーン『聖なる愛のエンブレム集』 (アントウェルペン、1660年) |
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Otto van Veen, Amoris divini Emblemata | ||
1615年に初版が刊行された本書は、構成においてオウィディウス的な世俗の恋愛術を扱った前作の『愛のエンブレム集』(no.17)を継承している。前作と同様に多国語版で、テクスト部分はラテン語、スペイン語、オランダ語、フランス語の4カ国語で記されており、挿絵には二人の天使が登場する。しかし、本書は一貫して宗教的愛をテーマとしており、イエズス会によって17世紀のオランダで数多く製作されることになる宗教的愛のエンブレム・ブックの嚆矢となった。『愛のエンブレム集』と同様に、天使のひとりはキューピッドの弓矢を持っているが、こちらは「聖なる愛」(Amor Divinus)の寓意像で、人間の霊魂(Anima)にあたるもう一人の天使を教え諭す構図となっている。 図[1]では鏡が太陽の光を反射して火をおこしている。人間の魂も同様に、神から受けた炎を増幅して他の魂を暖めるのである。図[2]では、キューピッドが孔雀を踏みつけて愛の弓と贖罪の鞭とで打ちすえている。孔雀は虚栄の象徴で、このエンブレムは虚栄心の強い俗世の愛を神の恩寵と謙虚の徳で撃退する必要を教えている。
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