エンブレム・ブック
10. ハドリアヌス・ユニウス『エンブレマータ』(アントウェルペン、1565年)

 

Hadrianus Junius, Emblemata syoshi.jpg (1610 バイト)

.   本書はオランダ人の医師、ハドリアヌス・ユニウスによるエンブレム・ブックの初版で、16世紀にフランダースで刊行されたエンブレム・ブックの大半を刊行したアントウェルペンの出版者クリストファー・プランタンが、初期に刊行したものの一冊である。G. BallainP. Huysの原画に基づいてArnold NicolaiGerard Janssen van Kampenが版刻した58点の木版画を含んでいる。プランタンは版木を再利用するために保存していたが、ユニウスのエンブレムのうち21点が、英語による最初のエンブレム・ブックのひとつである、ジェフリー・ホイットニーの『エンブレム集』(Geffrey Whitlney, A Choice of Emblemes, Leiden: Christopher Plantin, 1586)のなかで再利用されている。

   「善悪二つの道」という題辞を持つエンブレム[1]で、ルネサンスの理想都市のような背景を前に立っているのは、ヘラクレスと美徳と悪徳の擬人像である。理性で武装してヘラクレスを説得する「美徳」に対して、「悪徳」はキューピッドを連れた快楽の姿で誘惑するが、ヘラクレスは最終的に一時的な快楽を退ける。このエンブレムは良く知られており、ローレンハーゲンのエンブレム・ブック(no.21)にも登場する。

   「真実は時によって明らかとなり、分裂によって邪魔をされる」という題辞のエンブレム[2]では、鎌を持ち羽の生えたサターン(クロノス=「時」)が、娘の「真実」を土牢から救い出している。その背後には、「真実」の敵である「争い」、「嫉妬」、「誹謗」の姿が見える。同じ挿絵は、「真実は時の娘なり」という題辞が付されてホイットニーにも登場している。

 

ユニウス『エンブレマータ』の他の版: no.11

 

     

 

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