Graduate Seminar in Theatre Studies at Keio University

Activities

Dance-Talk④
プロセスを見ること

主催
科研プロジェクト「シアトロクラシーとデモクラシーの交差 演劇性と政治性の領域横断研究」
講師
宮川麻里子氏
司会
宮下寛司
開催日
2022年7月20日(水)
会場
慶應義塾大学三田キャンパス 大学院校舎 325-B

概要

以下の概要にてダンストークを開催いたしました。

 

ダンスの歴史を記述することは、単に作品や出来事を年代順に並べたり、ジャンルの成立過程を辿ったりすることにとどまりません。ある一つのダンスの中には、踊っている本人すらも忘れているかもしれない身体的な記憶が残されていることがあります。そのような記憶の蓄積を分析していくことで、思いがけないつながりが見出されることがあります。また、ある一つの身振りに注目した時、その「かたち」ではなくその動きが生成するプロセスに着目することで、新たな関連が浮かび上がってくることもあります。 これらは樹形図的・直線的な影響の外で、ダンスの歴史を見ていくことにつながります。 具体例として、舞踏の身振りを題材に、S・パジェスの著書を参照しながら表現主義舞踊やフランスのダンスとの共通項を見ていきます。また、舞踏家・大野一雄の身体に刻まれた記憶を検討しながら、舞踏の身体が出来上がるまでの過程を検証してみます。 プロセスへの関心は、作品創作の過程で捨象されていくさまざまなもの(稽古の時間やメモ、デッサンといった痕跡など)にわたしたちの目を向けさせます。ダンスが生まれる前に生じ、上演においては身振りの中に溶け込んでいくこれらの作業に思いを巡らせながら、それをどのような言葉や方法で論じることができるのか、ダンス研究の新たなアプローチを検討してみたいと思います。


・Photos