Graduate Seminar in Theatre Studies at Keio University

Activities

新しい民主主義論と演劇

主催
日本演劇学会
開催日
2022年6月4日(土)
会場
多摩美術大学上野毛校舎

パネリスト・発表題目
平田栄一朗 新しい民主主義論と演劇――パネルセッションの基本テーマとして
寺尾恵仁 演者と観衆のあいだ――承認のあり方から見るシアトロクラシーの可能性
針貝真理子 共有される「影」———田中奈緒子『影の三部作』に見えるプラトンの「洞窟の比喩」批判
宮下寛司 演劇的公共圏の原理としてのIn-difference――Cuqui Jerezのパフォーマンス『Rehearsal』を例に
三宅舞 「ネガティブなもの」に開かれた演劇――映画『ザ・スクエア』に見るパフォーマンス受容への視座

概要
民主主義の危機とそこからの脱却を目指す西洋の政治思想研究では、演劇にまつわる特徴がしばしば引き合いに出されている。例えばオーストリアの政治学者オリヴァー・マーヒャルトは、選挙による政権交代の可能性を前提とする民主主義政治の流動的な特徴を、根拠と無根拠との間における可変性という視点から説明し、その際、「遊戯」「舞台」「演出」「俳優」などの用語を用いて、政治と同様に根拠と無根拠の間で揺れ動く演劇的特徴を引き合いに出している。 ドイツの思想家クリストフ・メンケとユリアーネ・レベンティッシュは、プラトンが批判的に述べたシアトロクラシーとデモクラシーの論を、人権や個人の自由を強化する新しい民主主義論に読み替えつつ、芸術が民主主義文化に寄与する道筋を模索している。これらの論に共通するのは、演劇的特徴が政治的事象に「影」のようにして連れ立つことを認め、この影の特徴を考察し、それを来たるべき民主主義文化論に
組み入れようとする姿勢である。 このような民主主義と演劇の議論に対して、演劇を専門とする私たちはどのように応答できるだろうか。ある舞台作品の考察を、どのようにして演劇/民主主義文化の発展に寄与する論に結びつけられるだろうか。当パネルセッションではこれらの問いに対する何らかの方向性を演劇・映画作品の考察によって導き出したい。その出発点として挙げられるのは、演劇も民主主義も「根拠」と「無根拠」の間で揺れ動くこと、演劇は政治の議論以上に「開かれた思考」を促進できること、またそのために、演劇は「異質性」や「影」などの発想を通じた間接的な効果を及ぼしうることである。 当パネルセッションではこれらの方向性について1名が説明した後、4名が作品例に基づき例証する。

・Photo