トップ早池峰神楽

10. 座舞とその意味


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式舞や神舞が宗教性の強いものであるのに対して、座舞はより物語性をともない古能ともいえる性格を持ったもので、荒舞や女舞などをあげることができる。荒舞の中には、神功皇后の三韓征伐を舞う「三韓の舞」、源平の争いを演じる「屋島の舞」、牛若の「鞍馬の舞」、木曾義仲の最後を演じた「木曾舞」そして「曾我兄弟の舞」などが好んでとりあげられている。これらはいずれも武人の荒々しい所作を示すかのように反閇を多く伴った激しい舞いである。もっとも、その主題にとりあげられた武将の多くは悲劇的な最後をとげた人が多く、この荒舞が御霊鎮撫の性格を持っていたことが予測されるのである。

座舞にはこうした荒舞の他に繊細で華麗な、時にはエロチックでもある女舞がある。詩情豊かな「潮汲みの舞」、霊木物語を舞った「橋架けの舞」、「神巫女舞」や「野々宮の舞」などの巫女舞、また老翁に偽りの恋の約束をする「蕨折りの舞」や三輪山神婚説話に題材を取った「苧環の舞」などの抒情的な舞いが見られるのである。一方女の怨念から蛇身となったが熊野山伏の真言の功徳により成仏した清姫を演じる「鐘巻の舞(写真下)」のようなものもある。ちなみにこの舞いは怨念不浄の舞とされ、祈祷や祈願の神楽には舞ってはならないとされている。また「機織の舞」は都に出た夫が女狂いで帰らないと聞かされて自殺した機織の女が亡霊となるが、夫の法要功徳で成仏したという筋のものである。これも罪深い不浄の舞として、若夫婦の家や機繊の家では舞ってはならないとされている。修験者の呪力や真言の功徳を説く方法として語られ演じられる芸能も、こうしたものではそれに内在する超自然的な不思議な力故に、逆におそれられ忌避されたのである。裏返して考えればこのようなタブーが生まれるほど山伏神楽に対する人々の期待は大きかったのである。


鐘巻の舞
鐘巻の舞




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