【研究目的】

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 本研究の目的は、最終氷期(約7万年前以降)におけるユーラシア大陸北東部へのホモ・サピエンスの進出とその背後に存在した環境適応行動を、考古学、考古年代学、古生物学、分子系統進化学、環境遺伝学、地質学などの多様な分野の研究者による多角的かつ領域横断的な共同研究によって解き明かすことにある。調査・研究対象地域をバイカル湖北部のレナ・アンガラ高地、バイカル湖南部のザバイカル低山地、内蒙古山岳地域に設定。ロシア、モンゴル、中国など関係各国の研究諸機関の協力も得、遺跡群の踏査・発掘、資料群の収集に努めるなか、同地域における酸素同位体ステージ3(OIS3)段階の古環境と、文化的側面も含めた人類集団の環境適応行動の解明を目指す。

 近年、タジキスタンのラフマット洞窟やアルタイのカラ・ボム遺跡などでの調査成果から、凡そ10万年前にアフリカから拡散したホモ・サピエンスは遅くも4万年前までに中央アジアへ進出していたことが明らかとなった。そればかりか、北緯70度を超す北極圏への人類の進出も、局所的には極東地域にさほど遅れることなく試みられていたことも確認されるに至った。こうした状況下、ユーラシア北部への人類の移動・拡散プロセスに新たなシナリオを描く必要性が生じている。

 もとより、最終氷期のさなか、元来熱帯・亜熱帯のアフリカに起源地をもつ生物であった人類が寒冷地へ進出するためには、様々な文化的適応装置の開発・獲得が不可欠であったことは論をまたない。そして、まさにこの点に注目するがゆえ、本研究では、調査対象地域を最終氷期の間も一貫して氷床に被われることがなかった内蒙古からバイカル湖周辺に設定している。先史人類をしてユーラシア大陸北東部や新大陸へと移動・拡散することを可能ならしめた文化的適応装置。その開発・獲得過程は、更新世末期の約数万年間、同地域に連綿とのこされた遺跡群を調査・研究することで解明し得ると考えるからである。