イギリスの地誌
74.ロバート・ソロトン『ノッティンガムシャーの古事』(ロンドン、1677年)

 

Robert Thoroton, The Antiquities of Nottinghamshire syoshi.jpg (1610 バイト)

   17世紀から18世紀にかけて、カウンティーごとに現存する古文書を集成し、遺物や碑文を銅版画によって記録した地方地誌の大著が次々と出版された。17世紀の'antiquary'(古事研究家)のロバート・ソロトンは、そうした流れのなかで本書を執筆した。こうした地誌の特色は、重要な都市の景観図、大聖堂や代表的な教会の詳細な全体図や平面図、そして中心的購買層であった地方のジェントルマンたちの邸宅や領地の大型図版を数多く含んでいる点にあるが、ノッティンガムシャーを扱った本書でもこのような特徴は顕著である[2]。これらの図版の大半を製作したヴェンツェスラウス・ホラー(Wenceslaus Hollar, 1607-77)は、フォリオ版の地誌の製作には欠かせぬ人物であった。ホラーは景観図をイギリスに本格的に導入した人物で、図[1]のような景観図を、本書の他、ダグデイルの『ウォリックシャーの古事』(no.73)やエリアス・アシュモールの『バークシャーの古事』(Elias Ashmole, Antiquities of Berkshire, 1719)などのために製作している。この種の版画は、イギリスにおける風景への興味を美術と文学の両面で喚起する契機になったと言っても過言ではない。本書では原画はRichard Hall作となっているが、その理由はホラーが健康上の理由で調査旅行に同行できなかったからであると推察されている。

 

     

 

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