英文学 | |||
57.ジェフリー・チョーサー『全集』(ロンドン、1602年) | |||
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Geoffrey Chaucer, The Woorkes | ||
トマス・スペイト(Thomas Speght, fl. 1598)編纂による「チョーサー全集」の第2版。スペイトはケンブリッジ大学で学んだ後教師となり、同じくチョーサー全集を編纂したジョン・ストウ(John Stow)やフランシス・ザイン(Francis Thynne, 1545-1608)とも親交があった。本書の初版は同じくAdam Islipから1598年に刊行されているが、この第2版[1]では、初版では巻末にあった訂正を本文中に埋め込むなどの改訂がなされている。本文に先だつ伝記部分は、主にストウが集めた資料に基づいて作成されたもので、英語による最初のチョーサーの伝記である。本文はストウの版に僅かな変更を加えただけに留まっているが、本書はチョーサーの真作として、あらたにThe Floure and the LeafeとThe Isle of Ladiesの2編の詩を追加している。さらにスペイト版の特色は、初めて古語("hard words")のグロサリーを巻末に付した点にある。また本書で初めて登場したチョーサーのポートレイトは、もっともポピュラーなチョーサー像として定着することになる[2]。 ザインは、本書の初版が刊行された翌年に、訂正すべき個所を "Animadversions" と称して発表した。この第2版で、スペイトは謙虚にザインが提示した訂正を受け入れて注を改訂し、さらに初版ではほとんど手つかずだった本文の校訂も部分的にだが行っている。その意味では、第2版こそが本当の意味でのスペイト版であるとも言える。
チョーサー『全集』の他の版:no. 56
『鵞ペンから印刷機へ』, 29 |
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