英文学 | |||
56.ジェフリー・チョーサー『全集』(ロンドン、1561年) | |||
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Geoffrey Chaucer, The Woorkes | ||
ジョン・ストウ(John Stow, 1525?-1605)編纂による「チョーサー全集」の初版。ロウソク職人の家に生まれたストウはロンドンの仕立屋であった。本書はストウの最初の出版物だが、その後は歴史への興味がひろがり、Annales of England (1592), Survey of London (1598, 1599, 1603)などを刊行している。本書は、1532年のウィリアム・ザイン(William Thynne, d.1546)の版のリプリントであるが、この版の興味はむしろ、ストウが、主にケンブリッジ大学トリニティ・コレッジ所蔵の写本(MS R.3.19)から転記して全集に追加した宮廷風恋愛詩を中心とした23編の詩の方ににある。そのうち、今日チョーサーの真作として認められているものは3編だけで、他の大半はチョーサーとは無関係と見なされているが、このことは必ずしも、ストウがチョーサーの全集編集に際して厳格な編集者意識を持っていなかったことを意味するものではない。ザインの版もそうだが、「チョーサー全集」と呼ばれるものは、チョーサーの真作に加えて、他の作家によることが明白な作品も含めた「チョーサー的な作品群」とで構成されていた。このことは、チョーサーの人気を何よりも証明するものであると言える。ストウのテキストは、トマス・スペイト(Thomas Speght)の版(no.57)にも受け継がれており、ストウ版のタイトルページ[1]と「騎士の話」冒頭の木版画[2]も、それぞれスペイト版に利用されている。
チョーサー『全集』の他の版:no. 57 |
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