ヨーロッパ文学
53.ダンテ・アリギエリ『神曲』(ブレシア、1487年)

 

Dante Alighieri, La Commedia syoshi.jpg (1610 バイト)

   ダンテの『神曲』ほど、数多くの注解が書かれ、また挿絵の対象となった作品はない。原典の誕生と同時に注解の伝統が生まれ、現代のCharles Singletonなどの学術的校訂版まで続いていると言っても過言ではない。慶應義塾図書館には1516世紀の挿絵入りの『神曲』が3冊所蔵されているが、それらの間には興味深い連続性が認められる。

   このブレシアで刊行されたフォリオ版の『神曲』には、本文を取り囲むようにクリストフォロ・ランディーノ(Christoforo Landino)による注解が印刷されている。頭文字と欄外装飾は手書きで、ページの下には所有者が自分の紋章を入れられるように枠が用意されている。ランディーノの注解は、『神曲』を霊魂の成長の物語と解釈する寓意的なものだが、同時にそれまでの注解には見られなかった詳細な古典からの引用や言及の指摘を含んでおり、その意味で人文主義的な注解であると言える。「地獄篇」第1歌の挿絵[1]は、人生の旅路半ばにして暗い森に迷い込んだダンテの姿を描いている。ダンテが森に迷い込むと、豹、牝狼、獅子が順に表れて、ダンテを森の奥へと後ずさりさせる。この三匹の獣はそれぞれ、肉欲、高慢、貪婪の象徴と解釈されてきた。その時「地獄篇」でのダンテの導き手となるウェルギリウスが登場して、ダンテを押しとどめる。

   「煉獄篇」33歌への挿絵[2]では地上楽園の様子が、木々を蘇らせるグリフォンの凱旋戦車、ダンテに天上へと登る生気を与えるレーテとエウノエの河とともに描かれている。

 

ダンテ『神曲』の他の版:nos.54, 55

その他の画像 : [3]  [4] 

 

『鵞ペンから印刷機へ』, 97; 『理性の夢』, 28

 

     

 

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