表彰、イコン、ヒエログリフ、紋章
34.クロード・パラダン『英雄の標章』(アントウェルペン、1567年)

 

Claude Paradin / Gabriele Simeoni, Les Devises heroiques syoshi.jpg (1610 バイト)

   初版は1551年にリヨンのジャン・ド・トゥルネ(Jean de Tournes)により刊行されたが、この出版者はベルナール・ソロモン(Bernard Salomon)がデザインを担当した数多くのエンブレム・ブックを刊行した。本書の原画もおそらくソロモンが担当している。フランス語版の初版はクリストファー・プランタンにより1561年に刊行されたが、これがプランタンが刊行した最初のエンブレム・ブックであり、そこでもソロモンのデザインを丁寧に模写した新しい木版画が使用されている。版木は現在でもアントウェルペンのプランタン・モレトゥス博物館に保存されている。

   本書にはパラダン作の180点の木版画と、フィレンツェ出身のガブリエレ・シメオニによる37点とをあわせた、216点の標章が含まれる。シメオニのエンブレムは1559年に独立して刊行されているが、パラダンのそれと極めて良く似ているため、プランタンは一冊にまとめて刊行した。パラダンは標章の役割は教訓を視覚的に提示することで強く印象づけ、徳を育むことにあるとし、伝統的な標章を広く紹介することで、読者を徳へと導くことを本書の目的としている。本書は17世紀を通じて数多く版を重ね、1591年には英訳も刊行されている。また本書に含まれる標章は、室内装飾やつづれ織りのデザインとしても利用されている。

   「もう一つの命の希望」という題辞をもつ挿絵 [1]には、実った麦も一度地に落ちなければ新たな芽が出ないように、人間も一度死ななければ、この世の終わりの時に復活し栄光に包まれることはない、という説明が添えられている。この死と再生のパラドックスを扱うエンブレムは、カメラリウスの『植物の象徴とエンブレム』(no.14)にも登場する[2]

   「運命は徳の仲間」というエンブレム[3]は、大金持ちのアテネのタイモンの逸話である。ある画家がタイモンを喜ばせようとして、ひとつの街がまるごと網にかかっている様子を描いた。それを見たタイモンは、人々が、自分が徳の高さではなく運の良さのおかげで今の幸福を得た、と思っていることを知るに至った。

 

その他の画像 : [4]

 

     

 

  home_j.jpg (7036 バイト) sakuin.jpg (6924 バイト) tyosya.jpg (7414 バイト) syudai.jpg (7312 バイト) syuppan.jpg (7687 バイト) Englishpage_botin.jpg (7141 バイト)