エンブレム・ブック
24.ヨハン・デ・ブリュネ『エンブレマータ』(アムステルダム、1688年?)

 

Johan De Brune, Emblemata of Zinne-werck syoshi.jpg (1610 バイト)

   ヨハン・デ・ブリュネは生涯を故郷のミッデルブルフ(Middelburg)で過ごし、ゼーラント地方の行政の要職を歴任した。やはりエンブレム作家であったヤーコプ・カッツ(no.25)の友人で、本書の他にもことわざ集や政治に関する著述を発表している。デ・ブリュネはライデン大学で学んで法学士となり、その人文主義的な博識は本書に結実している。宗教的には正統派で、敬虔主義(pietism)の傾向が強く、本書においても神の国を勝ち得るためには苦しみが必要であると繰り返し説いている。

   初版は1624年にアムステルダムで、極めて正統的な宗教的傾向を持った出版者Jan Evertsen Kloppenburchにより刊行された。印刷はミッデルブルフのハンス・ファン・デル・ヘレン(Hans van der Hellen)によるが、ファン・デル・ヘレンはカッツのエンブレム・ブックも印刷している。銅板の原画は当時はミッデルブルフに住んでいたAdriaen van de Venneによるもので、Willem van de Passeをはじめとする数人が版刻しており、オランダ語のエンブレム・ブックのなかでも最高傑作のひとつに数えられるできになっている。

   デ・ブリュネのエンブレムに対する考え方は、同時代のオランダの他のエンブレム・ブックと少々異なっているようである。カッツのように読者を教化しようとする明確な意図のもとに編纂するというよりは、デ・ブリュネ自身のキリスト教的な道徳主義をエンブレムという形態を借りてまとめたといえる。綺想に富んだエンブレムは少なく、また、各エンブレムの後に続く散文による解題ではしばしば図の内容とは離れ、数頁にわたって作者自身の論述が展開されている。

   本書の挿絵には、扱っている教訓のいかんにかかわらず、寝室などの室内、街並み、景観が背景となっているものが多い。「苦しみとともに床につく者は、喜びとともに起きあがる」という題辞を持つエンブレム[1]は、寝室で子供の誕生を喜ぶ父親と産褥の床にある母親の姿を描いている。死後、天上で真の誕生を経験するには、現世での労苦を忍耐強く耐える必要があるという比喩である。また「信仰は逆境から生まれる」というエンブレム[2]は、廃虚に咲く花を描いて、同様に忍耐の必要を説いている。

 

     

 

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