エンブレム・ブック
13.ニコラウス・ロイスナー『エンブレマータ』(フランクフルト、1581年)

 

Nicolaus Reusner, Emblemata syoshi.jpg (1610 バイト)

   ヴィッテンベルク大学で学び、ストラスブール、イエナなどの大学教授を歴任したニコラウス・ロイスナーによるエンブレム・ブック。120点の木版画は、ニュルンベルクのフィルギル・ゾリス(Virgil Solis, 1514-62)とその後継者のヨースト・アマン(Jost Amman, 1529-91)による。

   本書は、本文中の書き込みから推察すると、1601-1607年にヴィッテンベルクとライプチヒで学生生活を送っていたザンゲルハウゼン(Sangerhausen)のミヒャエル・トリラー(Michael Triller)なる人物が所有していた書物で、1葉ごとに注解を記入するための白紙を挟んで装丁した、いわゆる'interleaved copy'である。表紙には所有者の頭文字(M T S)と年号(1601)が空押しされている。ほぼ全ページにわたって挿入された白紙には、テクストへの注釈ではなく、大学の友人、知人がさまざまな筆跡で記したギリシャ語、ラテン語、ヘブライ語の引用句が、記入者の日付入り署名とともに記入されており[1]、当時のエンブレム・ブックがしばしばそうであったように、本書が芳名録(liber amicorum)として使用されていたことがわかる。署名の多くは、トリラーが学生生活を始めた1601年のものだが、巻末には1607年にトリラーが学位を取得した際に友人が献じたラテン語の詩が2ページにわたって書き込まれている。

   「罪深き人間の鏡」と題される図[1]のエンブレムは、現世における人間の危うい状況を描いている。人間は、かろうじて塞いだだけの地獄の穴の上に、神の審判をダモクレスの剣のように突きつけられながら座っている。そして罪、悪魔、死、肉体、「肉体の腐敗」からの絶え間ない攻撃にさらされている。

   図[2]は迷路のエンブレムである。クレタ島で、怪物ミノタウロスを退治したテセウスがアリアドネの糸を手繰って迷路から帰還した話は、エンブレム・ブックでも盛んに寓意化の対象となった。「運命は道を見いだす」という題辞を持つこのエンブレムは、現世はさまざまな誤った道で人間を惑わす迷路だが、神の恩寵のみが確かな導き手となってくれる、という教訓を含むものである。同じテーマはクロード・パラダンの『英雄の標章』[3](no.34)にも同じ題辞を付されて登場している。

 

     

 

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