エンブレム・ブック | |||
9. ピエール・クストー『ペグマ』(リヨン、1555年) | |||
|
Pierre Cousteau, Pegma | ||
ラテン後の初版は1555年に刊行され、その9日後にはフランス語版も刊行されている。出版者のマセ・ボノム(Macé Bonhomme)は、単独あるいはギョーム・ロヴィル(Guillaume Roville)と共同で、アルチャーティ (ラテン語とフランス語の対訳版)、アノー、ラ・ペリエールなどのエンブレム・ブックの他、オウィディウスや聖書の挿絵本を刊行している。本書では、装飾的な銅版の枠に囲まれた題辞と挿絵、短い詩行に続いて、数ページの「哲学的」な解題が展開される。本書は、たとえば同時代のコロゼの『ヘカトングラフィー』(no.8)とは異なり、読者に相当の予備知識を要求する高級な内容のエンブレム・ブックである。もっとも、同時期に刊行されたLanteaume de Romieuによるフランス語版は、散文の解題を省略している。 著者のクストーについては不祥だが、本書の刊行にあたってボノムが本書専用の木版画を用いることを約束させられていることなどから、重要人物と見なされていたことは間違いない。木版は、ボノムとロヴィルが刊行したエンブレム・ブックの多くの図版を担当したPierre Eskreichの仕事である。 「三美神、アグライア、エウフロシュネー、タイレアの像について」という題辞の三美神のエンブレム[1]では、姉妹たちの気前のよさと、善きものを手にする重要さが指摘される。運命の女神に関連する図版はたいていのエンブレム・ブックに登場するが、図[2]では、それまで他者の運命を翻弄し悪事を働いてきた「運命」が、今やフランスの地で、その車輪とともに絞首架から吊されている。 |
|
||