西洋古典文学
2.ホメロス『全集』(ヴェネツィア、1504年)

 

Homer, Homeri Ilias / Ulyssea  syoshi.jpg (1610 バイト)

   ヴェネツィアのアルドゥス・マヌティウス(Aldus Manutius)は、1495年からギリシャ語古典の校訂版の刊行を開始し、1501年以降は、イタリック体を使用した小型の八つ折り版でラテン語やイタリア語の古典を刊行し始めた。アルドゥスは、その名を歴史に残すことになったこの二つの偉業を組み合わせるようなかたちで、ギリシャ語古典も八つ折り版で刊行している。慶應義塾図書館所蔵本は、タイトルページや奥書を欠いているが、1504年に刊行されたアルドゥス最初のホメロスの全集である。注目すべき点は、イエンセン印行のプルタルコス(no.1)など、フォリオ版のインキュナビュラの本文第1ページにしばしば認められる所有者の紋章入りの欄外装飾が、この小型本にも認められることである [1]Renouardの書誌によると、本書にはヴェラムに印刷された刊本が小部数存在するということだが、この点においても、紙に印刷した通常の版の他に羊皮紙を用いた豪華版を20部程度製作するという、1470-80年代のインキュナビュラの出版形態を踏襲している。

   アルドゥスの八つ折り版は書物生産史に革命を起こしたが、こうした印刷本ならではの近代的な形態にもかかわらず、慶應義塾図書館所蔵本が15世紀のフォリオ版の写本やインキュナビュラのレイアウトをまだ受け継いでいる点が興味深い。また、全体を通じてシンプルなデザインの手書きの頭文字で飾られている[2]

 

その他の画像 :   [3]

 

     

 

  home_j.jpg (7036 バイト) sakuin.jpg (6924 バイト) tyosya.jpg (7414 バイト) syudai.jpg (7312 バイト) syuppan.jpg (7687 バイト) Englishpage_botin.jpg (7141 バイト)