1986年の兎山堂本郷本縁譚(映像) (トサンダン・ポニャンポンプリ)  

 済州島にはムラごとに本郷堂という神域が一つ以上ある。ここにまつるカミの来歴が本郷本縁譚である。兎山堂は南済州郡表善面兎山里にある本郷堂。上堂(七日堂)と下堂(八日堂)にそれぞれ本縁譚がある。
 金允洙氏のイエの神クッでは八日堂のものが唱えられた。それによると、全羅道羅州郡錦城山の山神が玉石に化していた。それと知らぬ済州島人がソウルへの貢ぎ物献上の帰りにこれを持ち帰る。済州島に上陸はしたものの、この玉石をもてなす者がいない。兎山里に居ついたあと、次つぎと異変が起きる。これは玉石の祟りだった。ソウルから持ち帰った絹の包みを開けると、なかには蛇がいた。錦城山の山神は蛇となっていたのだ。こののち、この蛇神は八日堂のカミとして各地に広くまつられる。また、この本縁譚のあとで、蛇神を解放するとして結び目をつけた木綿の布を持って舞い、解きほぐすことをする。これは蛇神の祟りで死んだ者の救済にもなる(鈴木正崇・野村伸一編『仮面と巫俗の研究 ―日本と韓国―』、 第一書房、1999年、342頁)。
 

  映像(ビデオ1分57秒)  済州島のポンプリは独特の抑揚で唱えられる。神房は音楽に合わせて巧みな所作をみせ、簡単な演戯もみせる。
(撮影1986年10月19日在新村里、神クッの6日目、梁昌宝神房)。               (野村伸一)