東アジア研究センター研究例会のお知らせ

下記のとおり、アジア基層文化研究会2003年度第4回研究会を開催いたします。ぜひ、ご参集ください。

 記

日時 2004年3月31日(水)午後5時−8時

場所 慶應義塾大学三田キャンパス 大学院棟8階 共同研究室
 
題名  「映像による福建省南安目連戯」
 
映像解題  野村伸一(慶應義塾大学)

 
解題にあたって

 昨年(2003年)、7月19日に開催した研究例会「目連戯に組み込まれた「李世民游地府」
を観る、語る」では、次のように記しました。
 2002年10月22日から28日にかけて福建省南安市四黄村の草亭寺でおこなわれた目連戯を
検討します。これは一週間かけておこなわれた傀儡による目連戯で、「李世民游地府」
「三蔵取経」「目連救母」の三部構成で演じられました。傀儡班の中心者林文栄氏による
と、これだけの規模のものは、費用の関係から、近年ではめずらしいとのことでした。今
回は、冒頭に演じられた「李世民游地府」をビデオで再現し、その東アジアにおける文化
史、演劇史的な意味を考えてみようとおもいます。

 そこで、今回は、まず、全体の中心となる「目連救母」(10月24日−28日)の箇所をビデ
オ映像により検討してみます。同時に、編集した映像では伝えきれない部分も多々あるの
で、それを共同調査したメンバーが語り合うことで、目連戯の宗教文化的な意味を広げて
みたいと考えています。
 
 参考文献 泉州地方戯曲研究社編『泉州伝統戯曲叢書 第十巻』傀儡戯・《目連》全簿、
            中国戯劇出版社、北京、1999年。
 
当日の発表要旨「日誌 福建省南安の目連戯」
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東アジア研究センター研究例会のお知らせ

下記のとおり、東アジア基層文化研究会第3回研究会を開催いたします。ぜひ、ご参集ください。

 記

日時 12月20日(土)午後2時−6時

場所 慶應義塾大学三田キャンパス 大学院棟8階 共同研究室
 
題名  「女人救済儀礼の諸相−布橋灌頂を中心に−」
 
発表者 神田より子(敬和学園大学)

 発表者略歴

慶應義塾大学社会学研究科博士課程退学、社会学博士、現在敬和学園大学教授、
主な業績:『東アジアのシャーマニズムと民俗』勁草書房(共著)、『民俗宗教
の地平』春秋社(共著)、『仮面と巫俗の研究』第一書房(共著)、『神子と修
験の宗教民俗学的研究』岩田書院(単著)、『蕨岡修験の宗教民俗学的研究』科
学研究費研究成果報告書(単著)、『吹浦修験の宗教民俗学的研究』科学研究費
研究成果報告書(単著) 

発表概要

 平成8(1996)年9月29日(日)に富山県立山町芦峅寺で、「国民文化祭
とやま」の一環として、「布橋灌頂会」が復元され、その結果が実行委員会の手で
ヴィデオ化された。私は女人衆として布橋灌頂会に参加する機会を得た。今回はヴ
ィデオを手がかりに、布橋灌頂会に見る女人救済の状況を自身の体験も含めて述べ
てみたい。また長年つきあってきた岩手県陸中沿岸地方の神子が行っている「死霊
の口寄せ」のヴィデオを紹介しながら、死霊の救済としてではなく、女人救済の立
場から考えてみたい。時間があれば、イタコの口寄せのヴィデオも比較として紹介
したい(神田)。
 

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東アジア研究所研究例会のお知らせ

 下記のとおり、第2回研究会を開催いたします。ぜひ、ご参集ください。

 記

日時 10月24日(金)午後6時20分より

場所 慶應義塾大学三田キャンパス 大学院棟8階 東アジア研究所共同研究室

題名  「敦煌本『目連変文』の新資料について」
 
講演者 荒見泰史  あらみ ひろし

略歴

1965年、東京生まれ。東洋大学大学院中国哲学専攻修士課程(1994年)を経て、
復旦大学中国語言文学系博士課程修了(2001年)。文学博士。博士論文の題目は
『敦煌変文写本的研究』。現在は浙江大学敦煌研究中心に勤務する。近年の著作
に、「唐代講経的法会及押座文的位置」『中国学研究』第5輯,済南出版社,200
2年、「変と変文」『国文学解釈と鑑賞』平成15年6月号,至文堂,2003年、「敦
煌本故事綱要本」『姜亮夫、蒋礼鴻、郭在貽先生紀念文集』,上海教育出版社,
2003年、「敦煌文学与日本説話文学」『敦煌與絲路文化学術講座』第1輯,中国
国家図書館出版社,2003年、「敦煌変文研究概述以及新観点」『華林』第3号,
中華書局(近刊)、「敦煌文献和変文研究回顧」『敦煌吐魯番研究』第7号,北京
大学出版社,(近刊)などがある。

最近の研究

 敦煌講唱文学文献の研究。最近では敦煌写本のなかから説唱文学に関係すると
みられる写本を広く捜索し、説唱文学のなかでいかに変文が形作られ、使用され
ていったかを研究している。
 とくに最近では、複数存在するほぼ同一内容の変文写本の間で、韻文の位置や
散文の内容に違いがあるものが数点あることに注目し、これらの調査を通じて、
韻文体、散文体作品から、両者の組み合わされた講唱体作品への発展という説唱
文学の段階的な発展変化が読み取れることについて論じた(「從敦煌写本中変文
的改写情況来探討五代講唱文学的演変」中国国家図書館主催“敦煌写本研究、遺
書修復及数字化国際研討会”2003年9月)。 

発表要旨(荒見氏作成)

 「敦煌本『目連変文』の新資料について」

 本発表では、最近筆者が敦煌文献の調査の中で気づいた目連変文に関する資料
を数点紹介し、目連変文の成立年代、発展過程などについて筆者の見解を述べて
みようとおもう。
 本発表で、筆者が紹介しようとする文献は、主として中国国家図書館蔵文献
『(擬題)目連変文(二)』と、上海図書館蔵『盂蘭盆経讃述』の二点である。
 中国国家図書館蔵『(擬題)目連変文(二)』は、公開されてきた写真資料が
不鮮明だったため、これまで気づかれることがなく、とくに注目されることのな
かった文献である。筆者は国家図書館で実際に写本を閲覧したが、不鮮明ながら
明らかに講唱体変文であり、しかもこれまでに翻刻されたものとは異なる系統の
『目連変文』作品と確認できる。
 上海図書館蔵『盂蘭盆経讃述』は、九世紀半ばに作製された写本である。写本
上に「慧浄撰」との記載はみられるものの、これまでに『大正新修大蔵経』(第
85巻)などによって知られてきた初唐慧浄撰『盂蘭盆経讃述』とは異同のある、
かなりの加筆訂正を経た文献で、なかには後代の宗密(780‐841)『盂蘭盆経疏』
の影響すらみられる文献である。また、この上海本には、『俗講儀式』に記され
る通俗講経の講式と一致する箇所もみられ、かつ『盂蘭盆経講経文』との共通点
もみられるなど、通俗講経(俗講)に使用された可能性も考えられる。そこで筆
者は、この上海本の加筆訂正の状況を調査することはとりもなおさず九世紀中頃
の目連故事の発展段階を知ることになり、あるいは『目連変文』成立以前の状況
を知る鍵となるのではないかと考えている。 

本年第2回の研究例会にあたって

地域研究センターが2003年10月1日から東アジア研究所に改称されました。わたし
たちの研究プロジェクトは「危機の共同体ー東シナ海周辺の女神信仰と女性の祭祀
活動」として2000年にはじまりました。2001年度までに二度の国際シンポジウムを
おこない、その成果の報告集がまもなく出版されます。また、それにひきつづいて、
2002年11月2日には国際シンポジウム「目連戯とその広がり−東アジアの女人救済と
芸能」を開催しました。目連戯は関係分野が宗教、芸能、文学史、社会史などにお
よび、課題としてはたいへん大きいものです。そこで、これを中心に研究活動を継
続するべきと考え、さる7月19日に本年第1回研究例会「目連戯に組み込まれた
「李世民游地府」を観る、語る」を開催しました。第2回は、中国に拠点を置いて
敦煌学の最先端に位置して活躍する荒見氏に上記の内容で講演をしていただくもの
です。
なお、第3回研究例会は12月13日、土曜日、午後3時より「東北の語り芸にみ
る女性の救済」を予定しております。東北地方の「奥浄瑠璃」の世界から東アジア
の唱導へと連なるものを提示していただきたいと考え、目下、神田より子氏を中心
に計画を進めております。  
                        (野村伸一)

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地域研究センター研究例会のお知らせ

 下記のとおり、研究会を開催いたします。ぜひ、ご参集ください。

 記

日時 7月19日(土)3時より

場所 慶應義塾大学三田キャンパス 大学院棟8階 地域研共同研究室
 
題名  目連戯に組み込まれた「李世民游地府」を観る、語る
 
映像解題  田仲一成(東京大学名誉教授)


 内容紹介を兼ねまして

 ごぶさたしております。この間、2000〜2001年度の研究活動のまとめと報告書出
版準備などで手間取り、半年ほど充電期間を置きました。まとめのほうは一段落し
たところです。そこで、2001年度からはじめた「目連戯研究」を再開したいとおも
います。まず手はじめに、2002年10月22日から28日にかけて福建省南安市四黄村の
草亭寺でおこなわれた目連戯を検討します。これは一週間かけておこなわれた傀儡
による目連戯で、「李世民游地府」「三蔵取経」「目連救母」の三部構成で演じら
れました。傀儡班の中心者林文栄氏によると、これだけの規模のものは、費用の関
係から、近年ではめずらしいとのことでした。今回は、冒頭に演じられた「李世民
游地府」をビデオで再現し、その東アジアにおける文化史、演劇史的な意味を考え
てみようとおもいます。中国では変文の時代から「唐太宗入冥記」としてみられ、
また演劇史の上でも広く知られているとのことですが、これは中国だけではなく、
朝鮮にも伝わっていました。すなわち朝鮮朝の小説『唐太宗伝』として、また南部
地方の口頭伝承として、さらには済州島のポンプリ「世民皇帝本解」として近現代
まで語られていました。
 こうしたものが今日、目連戯のなかに組み込まれて残っていたのはさいわいなこ
とでもあり、それだけに、そのことの祭祀演劇的な意味を考えるのは意味深いこと
とおもいます。
 各方面からのご教示をいただければさいわいです。なお、当日は、田仲一成先生
に「中国演劇史からみた「李世民地獄巡り」」の題で、解題をしていただくことに
なりました。
 
                                                    (野村伸一)