表彰、イコン、ヒエログリフ、紋章
42. チェーザレ・リーパ『イコノロギア』(パドヴァ、1624-25年)

 

Cesare Ripa, Iconologia syoshi.jpg (1610 バイト)

     美術史家のエミール・マール(Emile Mâle)は、本書がバロック芸術に与えた影響の大きさを指摘して、『イコノロギア』を片手にローマ市内を回れば、パラッツォや教会を装飾している寓意像やモチーフの大半を読み解くことが出来ると記している。本書は、ペルージア出身のチェーザレ・リーパが「雄弁家、説教家、詩人、画家、彫刻家、設計者などが、綺想(コンチェッティ)、エンブレム、インプレーザを考案する際に役に立つように」編纂したもので、抽象概念や自然界の事象を寓意的擬人像により視覚化して理解するためのマニュアルとして、近代において最も広く利用された図像学のレファレンスブックである。初版は1593年であるが、Giuseppe Cesariによる挿絵が入るのは1603年の版からである。本書はGiovanni Zaratino Castelliniによる増補版の初版である。

   「敏速」(Celerità)は、自然界に存在する素早いものに囲まれた女性像として擬人化される[1]。手に稲妻を持ち、足下には海中を素早く泳ぐイルカを従えている。頭上に描かれるハイタカは素早く飛ぶ鳥の代表である。

   「明晰さ」(Chiarezza)の擬人像[2]は、右手に太陽を持ち、左手で大地を指さす裸体像である。真昼の太陽の光が全てを照らし出すように、己の姿を隠すことなく見せて、地上の事柄を明らかにする。

   寓意的擬人像の対象は抽象概念とは限らない。キリスト教国に君臨するローマは、手に王権を象徴する宝珠を持ち、忠誠の象徴である犬を従え、古代ローマ人の服装で描かれる[3]

 

リーパ『イコノロギア』の他の版: no.43 

 

水之江有一『図像学事典 − リーパとその系譜』(岩崎美術社, 1991

 

     

 

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