Graduate Seminar in Theatre Studies at Keio University

News

前原拓也君が修士課程を修了しました。修士論文「問い直される「歌う」という行為—クリストフ・マルタ—ラー『美しき水車小屋の娘』を例として」では、ドイツ語圏を代表する演出家マルターラーの音楽創作劇を取り上げ、歌うとは何であるかという問題が演出と歌唱に問われていることを指摘しました。 マルターラーの音楽劇では、オペラと声楽の歌手であれ、プロの歌手ではない俳優であれ、歌が本格的に歌われると同時に、そのヴィルトゥオーソの技巧が行き過ぎて滑稽になったり、周囲の人々の孤立感を深めたり、排他的な仲間意識を強めたりします 。また歌い手自身の心境がみずから歌うことで変化していく様相も巧みに示されます。前原君は、これらの歌唱の場面では、いずれも、歌うということはそもそも何であるかが問われており、問いは個々の場面で観客に提示され、オペラ史やヨーロッパの歴史的変遷のなかで考えるように示唆されていると指摘しました。


前原君は学部時代から演劇とオペラの制作者になることを目指して、学業と制作活動に熱心に取り組みました。学部3年から4年にかけてベルリン自由大学演劇学研究所に留学し、最先端の演劇(学)とオペラ(研究)に触れつつ、当地の演劇制作者と交流しました。 修士課程ではシュトゥットガルト歌劇場の制作にインターン生として携わり、オペラ制作の現場で研鑽を積みました。


修士課程修了後、前原君は演劇・ダンス・オペラの制作会社に就職し、制作者として本格的な活動を開始します。
いっそうのご活躍を期待しています。

 

2017/4 報告:平田