1. 西洋哲学倫理学史
  2. 諸特殊哲学
  3. 倫理学
  4. 美学美術史学
  5. 社会学
  6. 社会心理学
    (およびコミュニケーション研究)
  7. 文化人類学
  8. 日本研究(民俗学)
  9. 心理学
  10. 教育学
  11. 人間科学

君たちが勉学・研究していく際のよき導きとなるような文献リストのことを文献案内だとすると、本来であれば、君たち自身が、その関心に応じ、講義や演習で得た文献リストに基づきながら作成したものが、もっとも役立つリストなのだと思う。したがって、ここで展開される文献案内は、君たち自身がこれから教育学を学び、将来(たとえば卒論の際)作ることになる文献リストの、ささやかな出発点を提供するものでしかない。ぜひ、オリジナルな文献リストを作ることを目標に勉学・研究に励んでもらいたい。それこそが「学問する」プロセスなのだから。

我々の専攻は、1)教育哲学(教育基礎論)、西洋教育思想史、2)日本教育史、日本教育思想史 3)教育心理学 4)比較教育学の四分野から成っている。それぞれ慶應義塾大学文学部教育学専攻独自な特徴を持っている。言うまでもなく、それは、他大学でなされている教育学研究とまったく異質だというわけではない。しかし、決定的な違いは、教員養成、学校教育を直接の対象としているというよりも、学校教育を越えて広範囲に及ぶ、人間の成長、発達を支える活動自体を問題にしている点にある。人が人と関わり、何かを教え、次世代を育てようとするとき、内容は異なっても、そこに生じざるをえない課題や前提条件、方法一般を問題にしているのである。しかし、個人を社会や文化と媒介するこの営みを、社会の機能、個人の心理発達、文化伝達の問題と見なし、その詳細を考察するだけではない。一人一人の子どもや個人を「善く」しようとする働きかけと解したうえで、この営みの本質を西洋の思想や日本の思想の歴史的展開に探ったり、理解・認知の仕組みや心理発達の諸局面を考察したり、各国の制度やその背景にある思想を比較という手法を用い研究したりすることで行おうとしている。いわば、我々は、教育学の研究モードを、単に過去時制や現在時制のもとで考えているだけではなく、いまだ存在しない未来から遡及的に考えようとしてもいるのである。ここに教育学研究の面白さがあると同時に、科学としての難しさも生じてくる。

以下では、こうした観点に立って各分野における基本文献を紹介していきたい。