ジョセフ・フィンダー『ゼロ・アワー』
Finder, Joseph. The Zero Hour. 新潮社,1998. 655p.

 「地獄の王」と呼ばれる,めずらしくも南アフリカ出身のテロリスト,ヘンリック・ボーマンとFBIの女性捜査官セーラ・カーヒルとが主人公である。ボーマンは,脱税によりアメリカを追われてスイスに住み,アメリカへの復讐をたくらむ富豪に依頼されて,ニューヨークでビルの爆破を図る。しかし,事前にこれをキャッチしたFBIの特別捜査班の主任がカーヒルである。ボーマンは巧みに身を隠しながら準備を進めていくが,徐々に捜査の輪が狭まっていくという『ジャッカルの日』型のスリラーである。著者は,爆薬や通信システム,パスポート偽造などの知識を披露するが,コンピュータについては,それほどで詳しくはないようである。ボーマンもカーヒルも類型を出ない。しかしながら,こうした話は,最後まで読ませる力を持っているし,わずかしか登場しない爆薬処理班やカーヒルと組になるニューヨークの警官などには生彩がある。

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