スティーヴ・セイヤー『気象予報士』
Thayer, Steve. The Weatherman. 1995. 角川書店,1996. (角川文庫) 上下

 読み終えるにはかなり苦痛が伴い,しかもミステリかと思ったらそうではなく,はぐらかされた思いがする。スティーブン・キングが絶賛し,国内の書評もかなりよいのは何故だろうか。前半は,連続殺人事件で,後半は裁判である。この小説の主人公の第一はミネソタの気候であり,第二は死刑制度である。人間では,いずれもベトナム帰りの気象予報士とテレビのディレクタが主人公であるらしい。ベトナム帰り達に,どのような人生が残されているのかがテーマなのだろうが,屈折した心情はわかりにくい。片方が,女性のキャスターと結婚するが,この女性主人公自体は,上昇志向は強いが,さして魅力があるわけではない。竜巻,オーロラ,大雪,洪水と異常気象に襲われるミネソタとミネアポリス,セント・ポールのツインシティを著者は描きたかったのだろう。思わせぶりの多い展開に疲れるし,犯人を見落としてはいなかったかと読み直さなければならない。しかし,こういう気象予報士がいたなら,気象庁で是非雇ってほしいものだ。

[索引]