クライブ・カッスラー『マンハッタンを死守せよ』
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Valhalla Rising.Cussler, Clive.中山善之訳.新潮社,2002.(新潮文庫)上下

 米国のカッスラーの掲示板には,「ダーク・ピットは何歳か」というスレッドがある。1948年誕生説を採るなら現在でももう54歳である。最初に,例によって,歴史上の逸話が語られる。今回は,ヴァイキングによる11世紀のアメリカ大陸侵入と,100年前の潜水艦である。登場する悪漢は,アメリカの大手石油企業の経営者で,暗殺集団を持ち,議員や米国政府の役人を多数,買収し,脅迫している。その野望の達成のために,2,500名が乗り,処女航海でタヒチに向かう豪華客船を沈めようとする。火災により沈もうとする客船の乗客を救うのが,たまたま居合わせたピットとNUMAの調査船である。6000メートルの海底に沈んだ客船の調査をしていたら,NUMAの調査船が強奪されてしまった。ここから活劇が始まる。ヴァイキングや潜水艦の謎の解明を進めながら,次々に起きる災厄にピットは対処していくのであるが,ほとんど休む間もない活躍ぶりである。
 最後のとんでもない出来事には,思わず苦笑させられる。これからも話を続ける準備はできているぞということなのだろう。毎回,同じ様な展開であるが,飽きずに読めるのはカッスラーの才能だろう。今回は,特に疾走感がある。解説によれば,映画『タイアタニックを引き揚げろ』の悪評以来,このシリーズの映画化がようやく行われるされるらしいが,未だダーク・ピットを誰が演じるのか決まっていないようだ。ジョージ・クルーニーとブラッド・ピットを会わせたような役者がいればいいのだが。

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