北村薫『ターン』
新潮社,1997. 352p.

 『スキップ』に続く,時間のねじれをテーマとした3部作の2作目であるが,何度も投げ出したくなった。きっと最後にはあっと驚くことがるのだろうと思って最後まで読んだが裏切られた。母親と暮らす30歳の女性版画家が自動車事故が起きたとたんに,時間の流れから切り離されてしまって,予想もできない生活を強いられる。それは,時間という面からみれば,『リプレイ』というより西澤保彦『7回死んだ男』そっくりである。とは言え,たいした事件が起きるわけではない。ほとんどは,内面的なというか平凡な変化だけである。もちろん,恋愛小説ならそれだけで本来は十分なはずであるが,何とも幼い感じの文体であるために,主人公への関心も緊張感も持続しない。そしてご都合主義的であっても構いはしないが,主人公が悟りを開いた途端に大団円となるとすると,この現象は主人公に対する罰のように思えてしまう。『スキップ』にはいろいろ考えさせられるところがあったが,『ターン』には何もない。

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