アンドリュー・クラヴァン『真夜中の死線』
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Klavan, Andrew. True Crime. 芹沢恵訳. 東京創元社, 1999. 618p. (創元推理文庫)

 主人公スティーブン・エヴェレットは,多分30歳代で,『セントルイス・ニューズ』の記者である。不祥事で元の職場を追われ,この新聞で職を得たが,上司の妻と関係を持ち,妻ともうまくいかず,禁煙の職場で平気で煙草を吸い,セクシャルハラスメントも意に介さないという人間的欠陥は多いけれど仕事はできるというハードボイルド的設定である。一方に6年前に妊婦を射殺したために死刑になる男がいる。死刑執行当日に,その死刑囚に会ったエヴェレットは,無罪であることを確信し,真犯人を見つけだそうとする。しかし,時間はあまり残されていない。ハードルがいくつもあるが,エヴェレットはそれらをなぎ倒しながら進んでいく。本来なら,もう少し緊迫感があってもいいはずであるが,死刑執行の詳細を延々と描いているので,本題に入るまでに半分が過ぎる。犯人探しの部分はほんのわずかであって,それよりも寄り道が多くてうんざりする。

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