東野圭吾『トキオ』
B−
講談社,2002.414p.

 父と息子の情愛と1980年を描こうとしているらしい。主人公は,妻と共に難病に苦しむ息子の最期を見とろうとしている。ところが,20年ほど前,自分が23歳だったとき,息子に会っていた。というので,1980年が舞台となる。主人公は,自分勝手でいい加減で,すぐ暴力をふるい,まともな仕事につくこともない男だった。養父母に育てられたが,会いたいと言ってくる実母を嫌っていた。そこに二十歳くらいの青年,つまり息子が近づいてくる。血のつながりがあると言い,一緒に住むことになる。恋人から紹介された就職口で入社試験に失敗などをしているうちに恋人に捨てられてしまい,大阪まで追いかけて行くのだが,事件に巻き込まれる。
 1980年前後の二つの事件を背景に,当時の風俗を再現しようとする一方,若い男が未来から来た息子に更生させられる話である。最後に何か大きな出来事でもあるのかと思ったがそのようなことはなかった。


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