タイムトラベラーズ・ワイフ
Niffenegger, Audrey.The Time Traver's Wife.羽田詩津子訳.ランダムハウス講談社,2004,上下

 ヘンリーは,記憶を保ったまま,過去と未来に移動する能力を持っている。自分でそれが起きる時間も行く場所もコントロールできず,移動して着いた時は裸である。短い間,異なる時で過ごし,また現在に戻ってくる。1977年,使用人の大勢いる家に生まれたクレアは6歳の時,初めて2000年から来た36歳のヘンリーと会った。ヘンリーはクレアの将来を知っているが,クレアは知らない。ヘンリーは自分はタイム・トラべラーだと名乗り,家の人たちには秘密にしてくれ,次に来るときには服を用意してくれと頼む。こうして,ヘンリーは,クレアが18歳になるまで,152回も会いに来る。そして,クレアが20歳になった1991年に,シカゴのニューベリー図書館でそこの図書館員である28歳のヘンリーに出会う。この時にはクレアにはすぐヘンリーがわかるが,ヘンリーはまだクレアを知らない。

 このように複雑な構成になっているが,ほぼ時間軸に従って語られていく。よくできたタイムトラベル仕立ての恋愛小説である。作者は女性であるし,クレアが主人公だろう。前半のクレアの子供の時代と二人が出会うあたり,それに2010年のアルバと出会う場面がよい。クレアに問題が起きそうになると,未来や過去からヘンリーが助けにくるという仕組みになっている。幸福をもたらすだけではなく,非情さもある時間がテーマであるから,結末もそれに沿った形になっている。米国でも純愛小説や映画は流行しているようであるが,日本や韓国とは違って少しだけ苦い味を含ませることが多いように見える。

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