ピーター・ラヴゼイ『地下墓地』
A−
Lovesey, Peter. The Vault. 山本やよい訳. 早川書房,1999. 330p.

 イギリスのバースのローマ浴場近くの地下墓地で人骨が発見されるところからはじまる。20年近く前の骨である。主人公のダイヤモンド警視は,これをのんびりと捜査をしている。世界遺産バースのもう一つの名所,弧型の集合住宅ロイヤルクレッセントの中にあるホテルに泊まっているアメリカ人の大学教授は,メアリー・シェリーがこの町で『フランケンシュタイン』を書いたことを明らかにしようとしている。人骨が発見されたのは,シェリーの住居の下にあたる。この方向で話が進むかと思うと突然,殺人が起きて,急転回していく。コンビを組んでいた女性警官が転任したと思ったら,上司に女性を迎えたダイヤモンドをはじめ個性的な人物達が登場し,事態は複雑になっていくが,20年前の殺人事件と現在の事件が唐突に結びついて鮮やかに終わってしまう。バースを訪れるなら必読の観光案内でもある。ダイヤモンド警視ものは高い水準を維持している。

[索引]