ジェイムズ・H・コッブ『攻撃目標を殲滅せよ』
Cobb, James H. Target Lock.伏見威蕃訳.文藝春秋,2002.上下(文春文庫)

 アマンダ・ギャレットシリーズの第4作である。日本語の書名には,工夫が欲しかった。南極,中国,アフリカに続き,今回の舞台はインドネシアである。2008年にアメリカの実験用人工衛星が南太平洋で着水回収後に海賊によって強奪されてしまう。米海軍の特殊部隊の司令官マッキンタイア中将は,地中海で作戦中のアマンダ・ギャレット大佐のシーファイター部隊に捜索を命じる。アマンダは,ステルス駆逐艦「カニンガム」と強襲揚陸鑑「カールソン」を率いてインドネシアに向かい,バリに停泊し,海運業を営むハーコナンに招かれる。これまでと同じように,最新の兵器と有能で忠実な部下たちによって大胆な作戦が繰り広げられる。これまでと違うのは,相手が国ではないことと活躍するのは,アマンダの上司,マッキンタイア中将と部下のレンディーノ少佐でありことである。二人の会話はいい。また,インドネシアの抱えている問題もよくわかる。しかし,問題は主人公のアマンダ・ギャレットである。裏切りとまでは言えないが,薄汚れた感じになったのは残念である。

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