ジル・マゴーン『騙し絵の檻』
Mcgown, Jill. The stalking horse. 中村有希訳.東京,東京創元社,2000. 314p. (創元推理文庫)

 タイトルからは何もわからない。イギリスの大企業グレイストーン社の株主であり,役員である主人公は,29歳の時に,幼なじみの会長夫人と私立探偵を殺した罪で終身刑となり,16年後に仮釈放されて,真犯人を見つけ復讐しようと戻ってくる。グレイストーン社で役員を務める5人が容疑者である。元新聞記者であるジャンを助手として,一人一人に話をきき,あらゆる手がかりを求めて捜査をしていく。しかしながら,重要な新事実など何も出てこない。解説にあるとおり「古風なパズラー」であり,退屈な話を辛抱強く読み進めると,終わりの10ページでようやく真犯人とその動機がわかる。といったって,はじめから範囲は絞られているし,意外性は乏しい。登場人物も丁寧に書き分けられているとは言い難い。

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