氷と炎の歌シリーズ
Martin, George R.R. 『七王国の玉座』(岡部宏之訳,早川書房,2002),『王狼たちの戦旗』(岡部宏之訳,早川書房,2004)

 マーティン,ジョージ・R.R.の『氷と炎の歌』(A Song of Ice and Fire,)シリーズは,原作は4巻まで出ていて,翻訳は,『七王国の玉座』(A Game of Thrones)と『王狼たちの戦旗』(A Clash of Kings)の2巻が出版されている。翻訳は各巻は2冊に分かれ二段組で計1000ページと長大であるが,読み始めたら止まらない。作者の想像力が際だち,エピソードの一つ一つに特色があり,次から次へとジェットコースター的に展開していく。予想は裏切られ,先は全くわからない。21世紀にかけてのファンタジーの代表作であろうと評されているのもよくわかる。

 最初は,子供たちが中心のように見えるので,普通のファンタジーであろうと思えたが,直ぐに近親相姦が出てきて,子供がかなりひどい仕打ちを受けてしまったのには驚いた。つまり,これは大人向きであって,レイプ,娼婦,首切りなど何のためらいもなく出てくるし,大人のむき出しの欲望が語られ,子供だから殺されないということもない。
 イギリスに似た島国で貴族が王位を取り合っているのであるが,別の大陸からの脅威,やがて来る恐ろしい長い冬と,スケールの大きな舞台が用意されている。2巻が終わっても序の口といった感がある。主人公は,スターク家の庶子を含む6人の子供たちであるが,物語が始まるやすぐさま全員が散り散りになり,それぞれに苦難が襲いかかる。最も個性が際だっているのは,スターク勢と対立するラニスター家の醜いが賢いティリオンである。登場人物はいずれもしたたかで自分の欲望に忠実である。登場人物が多くて覚えきれないので,早く4巻まで訳してほしい。

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