クライブ・カッスラー,ポール・ケンプレコス『コロンブスの呪縛を解け』
Cussler, Clibve, Kemprecos, Paul. Serpent. 中山善之訳. 新潮社,2000. (新潮文庫) 上下

 主人公は架空の国立海中海洋機関NUMAの職員であるが,高齢化の進むダーク・ピットではなく,カート・オースチンという新人である。「NUMAファイル」シリーズの第1作になる。カッスラーが考え,小さい活字のケンプレコスが書いたのだろう。話の筋立てはいつも通りである。最初に客船同士の衝突事故があり,最後にこの事故が関係してくる。コロンブスの最後の航海と終焉の地,カルタゴから逃れたフェニキア人はどこに行ったのか,それにマヤ文明の遺跡に謎の結社と歴史的背景も十分である。ダーク・ピットシリーズにも当たり外れがあるが,この『コロンブスの呪縛を解け』は,それ以前の出来である。何より,主人公がいかにも二番煎じであって,魅力に乏しい。一方,生彩があるのは,脇役として出てくる女性海洋生物学者ガメーとメキシコの博物館長でマヤ人のチイ博士である。このコンビを主人公としたほうがずっとよい。ここで出てきた悪党は死んでいないので,今後のこのシリーズに再登場することだろう。

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