ジョエル・タウンズリー・ロジャーズ『赤い右手』
Rogers, Joel T. The Red Right Hand. 1945. 夏来健次訳. 国書刊行会,1997. 278p. 世界探偵小説全集

 読者を混乱させることを目的としたミステリである。もう50年も前の作品であり,舞台は第二次大戦中のヴァーモント州の田舎である。ニューヨークから車できた新婚旅行中の男女がヒッチハイカーを同乗させるところから始まり,連続殺人が起きる。居合わせたニューヨークに帰る途中の医師の手記のような形をとっているが,事件が時間を追って記述されているわけでもなく,曖昧な部分も多く,次第に読者は必ずある疑惑を持つようになる。この点については,解説で詳しく分析されている。この作品が大勢の人から気に入られているらしいのは,おそらく読者を騙すことに成功しているからであろう。しかしながら,犯人の動機は全く図りかねる。

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