ポール・アルテ 『第四の扉』
Halter, Paul.La Quarteieme Porte.平岡敦訳.東京,早川書房,2002.212p.(ポケットミステリ)

 フランス人作家によるイギリスを舞台にしたミステリである。1950年頃,イギリスのオックスフォード近郊の村に三家族が住んでいる。スティーブンス家は,ジェイムズ,エリザベスの兄妹と父エドワーズと母,ダーンリー家は,ジョンと父ヴィクター,母親は屋根裏部屋で不可解な死を遂げた。ホワイト家は,ヘンリーとその父アーサー,母親は交通事故で死んでしまう。ダーンリー家の住まいに幽霊が出ると言われているが,そこに霊能力者であるラティマー夫妻が間借り人として引っ越して来る。やがて,アーサーが何者かに殴られ,アーサーは失踪,ダーンリー家で交霊実験をしていたら,密室殺人が起き,さらに何人かが不可解な方法で殺される。さらには,フーディーニや奇術などが道具として使われるなか,ドルー主任警部,ツイスト博士がこの謎を解く。本格ミステリの形をとるが,結末からみれば,(多分)そのパロディであることがわかる仕組みである。登場人物に個性がないことは,その名前からもわかるが,書き割りのような舞台で,動機などほとんどなく不可能犯罪が次々と起きる。ただ,最後に読者が混乱させられるのが新しい趣向となっている。

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