リチャード・ノース・パタースン『サイレント・スクリーン』
B−
Patterson, Richard North. Private Screening. 田村義進訳, 扶桑社. 1999. (扶桑社ミステリー) 上下

 二つの話からなっている。「現在」では,歌手のマネージャーと新聞社主夫人が誘拐されている。これは,過去の事件と関係があるが,その一つが,1年前の大統領候補の暗殺事件である。女性ロック歌手ステイシー・タラントの資金集めコンサートの舞台で大統領候補が殺され,その犯人の弁護を行うのが一応の主人公のアントニー・ロードである。妻は別の男の元にいき,子供も取られそうなロードは,どうにも弁護のしようがない犯人の弁護にあたる。これが前半分。そして,誘拐事件でもいやおうなく関わりを持たざるを得なくなる。誘拐事件の犯人は,たやすく想像がつくが,犯人が判明した後にひねりがあり,『モスクワ2015年』と似たようなことが起きる。これによって全体の構造が変わってしまう。ロードの存在など本筋ではなかったらしい。この作品で評価するとしたら法廷の場面だけであり,『罪の段階』には,はるかに及ばない。

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