ローレンス・ワイズバーガー『プラダを着た悪魔』
A−
The Devil wears Prada.Weisberger, Laurence.佐竹史子訳,早川書房, 2003,492p.

 これはミステリではない。主人公アンドレアは,コネティカット州の片田舎の出身で,ブラウン大学を出て物書きになりたいと思っている。たまたまファッション雑誌『ランウェイ』の面接を受けたら合格し,伝説的な編集長ミランダ・プリーストリーのアシスタントとなる。しかし,ミランダは人使いが荒い女で,アシスタントは,正に奴隷だった。時間にかかわりなく携帯電話で用事を言いつけてくる。出勤前までに揃えなければならない新聞,コーヒーなどの準備をするために朝は7時に出勤,夜は,原稿を自宅まで運ばなければならない。しかも,命令は不明瞭で,聞き返してはいけないので,あらゆるつてをたどって調べなければならない。1年間仕えれば,『ニューヨーカー』への紹介をしてくれそうなので,必死に役目を果たそうとする。
 現代のマンハッタンの事務所を舞台とした風俗小説で,書名通りに面白い。何百万人の女性が憧れている職に就いているという自負と,全うすれば,憧れの職場が待っているという期待で馬車馬のように働く。給料は低いが,様々な特典がある。最新の服を着ることができるし,タクシー代などは全て会社持ちにできるし,ジョニー・ディップやジェニファー・アニストンが来るパーティにも出席できる。何より,カリスマ編集者ミランダのご威光を利用できる。なるほど秘書はこのように使うのかという教則本でもある。

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