ブライアン・ヘイグ『キングメーカー』
A−
Haig, Brian.The Kingmaker.平賀秀明訳,新潮社,2003.新潮文庫上下

  米国陸軍のモリソン准将がロシアに機密情報を流していたという国家反逆罪で逮捕された。主人公の陸軍法務官ドラモンド少佐は,モリソンの妻メアリーとかつて付き合っていたが,弁護を頼まれる。しかしながらモリソンは自殺未遂を起こすし,検事側は大量の証拠を持ち,マスコミにもリーク怠りなく圧倒的に不利な状況である。ロシア語のできる弁護士を探したが,見付かったのは,鼻穴にピアスをしたサンドラ・ブロック系のストリート弁護士カトリーナだった。ドラモンドは,モリソンから話をきき,カトリーナとともにモスクワに赴き,ロシアの対外情報局長官アルバトフと接触する。その直後に何ものかに銃撃される。カトリーナはアルバトフからモリソンについて聞き出す。
 久しぶりに一息で読んだミステリである。下巻を買っていなかったので,手に入れるまでもどかしかった。主人公のドラモンド少佐は,頭の回転の速さは今ひとつで,グレース・ケリー似というCIA幹部メアリーの言うがままになっている。それでも行動力で何とか逆境から抜け出す。カトリーナも魅力的な人物であり,俗物と対決する場面がよい。全体として不自然なところが多いが,ロシアの崩壊の裏に何があったかという政治的なホラ話としては,良くできている。

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