P.T.デューターマン『闇の狩人を撃て』
Hunting Season,Deutermann, P.T. 阿尾正子訳.二見書房,2003.上下(二見文庫)

 CIAで高度な訓練を受けて,ある事件にかかわり引退した元FBI捜査官クライスは,ヴァージニア州ロアノーク近くの山小屋に大学生のひとり娘リンとともに住んでいた。友達とキャンプに出かけたリンが行方不明になった。3週間が経ち,ロアノークのFBI事務所の女性捜査官ジャネットらはクライスの元に捜査を中止することを告げに行く。クライスは,一人で捜査を始める。どうやら,リンたちは,近くにある元陸軍兵器工場に向かったらしい。忍び込んでみると,閉鎖されたこの工場に人の気配がする。老人と若い男が秘密裏に作業をしていた。若い男のトレーラーハウスに行き,男を問いつめる。
 CIAでスパイ狩人をしていた男が,政府からおとなしく引退するように言われて隠遁生活を送っていた。しかし,あやしい男達がどうやら娘の行方を知っているとなるとそうもいかない。一方,あやしい男達は,廃工場で政府をこらしめるための爆弾を製造し,テロを実行しようとしている。また,政府からはクライスを始末するために凄腕の殺し屋が派遣されてくる。そこに,捜査官としてはアマチュアの女性が絡む,といったかなり盛り沢山な内容であるが,読者の予想を少しずつ裏切りながら話は進んでいく。先が読みにくいのは確かであるが,もう少し,テンポがよいといい。

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