歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』
文藝春秋,2003,444p.

 主人公の成瀬政虎は,東京の白金のアパートに妹と二人で住んでいる。様々な仕事を引き受けながら気楽に暮らしている。平成14年8月のある日,フィットネスクラブで,7歳年下で青山高校に通う後輩からひき逃げで死んだ男の調査を頼まれる。どうやら蓬莱倶楽部という健康食品や羽根布団を売っている会社があやしい。成瀬は,以前,探偵事務所に勤めていたことがある。その時,暴力団の内偵をしたことがある。同じ日,広尾駅で,地下鉄に飛び込もうとした女を助ける。
 最後に全体をひっくり返すような真相が明らかになる。これは,何かおかしいと思いつつも誰もが予想しなかったことで,鮮やかである。ただ,もう一度前を読み直したいとは思わなかった。なるほど「葉桜」かと気付く。けれど,だからと言って事件自体が違う意味を持つわけではないし,残り80ページほどでのアピールは全く意味がない。

[索引]