ロバート・ゴダード『鉄の絆』
A−
Goddard, Robert. Hand in Glove. 越前敏弥訳. 東京創元社, 1999. (創元推理文庫) 上下

 前半は『千尋の闇』に代表される過去の謎解きと親しいものの裏切り,後半は『日輪の果て』のアクション重視という二段構えになっている。主人公,シャーロット・ラドラムは遺産で暮らす36歳独身。両親は亡くなり,主な身内は兄モーリスと祖母ベアトリックス・アプリーだった。詩人だった祖父のトリストラム・アプリーは,スペイン戦争で戦死した。そして,祖母ベアトリックスが一人住まいの家で殺される。犯人が捕まるが,その弟の会計士デレク・フェアファックスは兄の無実を明らかにしなければならなくなる。祖母は,殺されることを予期して,書類を4人に送っていた。3人はシャーロットの知らない人々である。こうして,探索がはじまり,善良なシャーロットはその結果,思いもかけぬ事実を知る。ベアトリックスが隠していた謎は二重になっていて,スペイン戦争時代の事件にまで行き着く。『日輪の果て』よりもはるかによくできている。緻密に構成されており,一つ一つの謎が解き明かされていく。

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