ジョイ・フィールディング『グランド・アヴェニュー』
A−
Grand Avenue.Fielding, Joy.吉田利子訳,文藝春秋,2002..577p.(文春文庫)

 舞台は,北米で最も住みやすい都市に選ばれたこともある人口37万人のオハイオ州シンシナティである。ここに住む4人の女性の23年間の出来事が中心である。4人は,高級住宅地のグランド・アヴェニューという通りに家があり,2歳前後の娘がいて公園で子供を遊ばせていたら雨が降ってきたので,一人の家に逃れ,それから付き合いが始まった。家庭内暴力,若い娘と一緒になった夫との離婚,セクシャルハラスメント,出世,言うことを聞かなくなった娘などそれぞれが,異なった道を歩みながら経験していく事柄と4人の関わり会いが綴られていく。
 この20年間のアメリカ社会の変化を受けながら20代後半から50代までの四つに類型化された女性の生き方を実に巧みに描いている。終盤に仲間の一人が殺されるという事件が起きる。その事件の進行とともに,長く続いてきた友情は崩壊していくことになる。現実的で生真面目で残酷な小説である。

[索引]