G.M.フォード『憤怒』
Fury.Ford, G.M.,三川基好訳,新潮社,2003.497p. 新潮文庫

 舞台はシアトルである。主人公は,コーソという30代の新聞記者で,ニューヨークで記者をしていたが,誤報で職を失い,シアトルの小さな新聞社でコラムを書いている。コラムの人気は高いが,めったに人前に出てこない。さて,シアトルでかつて連続レイプ殺人事件があり,その犯人として,逃げ延びた被害者の証言で,前科のある悪党が捕まった。間もなく死刑になる。ところが,証言を覆した証人を確保した新聞社の社主は,コーソに記事を書かせて,新聞社の建て直しをもくろむ。拾って貰った恩のあるコーソは,死刑までのタイムリミットまでに真犯人を見付けようとする。シアトルでは,またも連続レイプ殺人事件が起き,警察は,これをひた隠しにしている。
 新聞記者と死刑囚という点では,『真夜中の死線』と似ている。次第にいやに複雑になっていき,収拾するためにかなり乱暴な終わり方をする。冤罪だが死刑になっても仕方のない様な死刑囚というアイデアはよかったのかもしれないが,それではたやすく結末が予想できてしまう。

[索引]