スティーヴン・キング『図書館警察』
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King, Stephen. Four Past Midnight. 1990. 白石朗訳,文藝春秋,1996. p.7-235

 原題は「The Library Policeman」である。借りた本を返却期限までに返さないと「図書館警官」がやってくるのである。40歳ほどのビジネスマンである主人公が,ロータリークラブでの講演を急に頼まれ,秘書の助言で原稿に「味付け」するため,『講演者必携』と『アメリカ愛読詩集成』を借りにいく。そこで出会った図書館員の老婦人に,返却期限を守るように言われる。講演は大成功だったが,本をなくしてしまった。督促の電話があり,図書館警官がやってくる。本を探し回るうちに,図書館員の正体が明らかになっていく。ともかく亡くした本の代わりを見つけ,夜遅く閉まった図書館に返しにいくと・・・。吸血鬼タイプの怪物と主人公の少年時の体験とを結びつけたホラーであるが,さほど怖いわけではない。次々と倒れていく書架といったシーンはあるが,図書館を舞台にするのであれば,もう少し工夫があってもよかった。それよりも,ここに登場する図書館員,ストーリーテリング,それに子供になされる行為などは図書館におぞましいイメージを与えるものであるが,スクエアな図書館団体は抗議しなかったのだろうか。それにしても,この怪物は,なぜ図書館員になりたがるのだろう。

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