ジェイムズ・ロング『ファーニー』
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Long, James. Ferney. 坂口玲子訳. 新潮社,2000. 613p. (新潮文庫)

 登場人物は実質的にはわずか三人である。神経質な若い女ギャリーとその夫の中世史の研究者であるマイク,この二人がイギリス南西部の古戦場ペンセルウッドに買った廃屋に住むことになり,そこに現れる83歳の老人がファーニーである。時間を超えて転生するカップルというなかなか興味深い話であるが,長すぎるし筋立てがよくない。エピソードは小出しに出されるだけであり,歴史への関心を満足させない。謎があるのかないのか,あるとしたら何なのかははっきりしないし,主人公ギャリーは,秘密を守ることができない,つまり何が大切なのかがわからない人間である。夫のマイクも善人であるが,気の毒な役回りである。不快感を感じざるを得ない。ファーニーは,長く生きてきたにしては,思慮が足りない。それでも,結末には何かあるだろうと思ったが,何もなかった。

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