横山秀夫『動機』
B−
文藝春秋,2000.290p.

 短編集である。表題作『動機』の評判が高い。前作の『陰の季節』同様,警務部という部署にいる警察官からみた警察の内部を描いている。主人公が紛失事故防止のために導入した警察手帳の一括保管制度が実験されるが,保管場所から30冊の手帳が紛失してしまった。捜査からは外されるが,独自に調べていき,犯人を見付けるが,その動機が意外だったというものである。警察だけでなく,日本の組織の体質,日本人のメンタリティ,さらには主人公の父親の姿などがうまく取り込まれている佳作である。しかし,残りの三編は,主人公は警察官ではない。いずれも作りすぎで登場人物に生彩がない。

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