恩田陸『ドミノ』
角川書店,2001.340p.

 舞台は,東京駅である。名前を与えられている主人公だけでも27人いて,他に1匹の動物がいる。7月の終わりの午後の数時間の間に東京駅周辺で起こる事件で,一つはある保険会社の入金を巡るトラブルともう一つは,いまどき珍しい爆弾テロリストが引き起こす人質事件であり,これに「動輪の広場」で待ち合わせるネット俳句仲間の老人達,三角関係の男女,オーデションに来た子供達,ハリウッドから来た映画監督などが紙袋を巡って絡まりあう。登場人物に駅員がいないのは,舞台を貸した東京駅にとっては不幸なことである。ドミノというからには,ドミノ倒しのカタストロフィが期待されるが,登場人物達がただ右往左往して終わる。ユーモアとともに悪意も大幅に不足している。

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