スティーブン・ハンター『ダーティホワイトボーイズ』
Hunter, Stephen. Dirty white boys. 1994. 公手成幸訳. 扶桑社,1997, 737p. 扶桑社ミステリー

 オクラホマ州の刑務所の38歳の終身犯ラマー・パイが主人公である。巨漢であるラマーは自分よりもでかい囚人を殺してしまい,庇護している二人の男とともに脱走する。脱獄の間にさらに二人を殺してしまう。ラマー・パイは,おそろしく頭が切れる男で,しかも殺人をなんとも思っていない。車を手に入れ,銃を奪い,隠れ家を見付けてひとまず,逃げおおせてしまう。一方,もう一人の主人公であるハイウェイ・パトロールのバド・ピューテイ48歳は,パイらと何度も銃撃戦を交え,病院送りとなりつつも,次第に追いつめていく。両者の対決がクライマックスである。といったように,どちらかと言えば,暴力や破壊による快感を与えるようになっている。700ページを超え,上下に分けたほうがよいのだろうが,読み始めれば必ず最後まで行くので,1冊のほうが便利である。ただ,こうしたタイプの「悪」は,陳腐であることを免れることはできない。

[索引]